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千葉地方裁判所 昭和53年(ワ)303号 判決

原告 吉沢今朝雄

原告 吉沢清子

右両名訴訟代理人弁護士 北光二

被告 木更津市

右代表者市長 北見日吉

被告 木更津市清見台第二土地区画整理組合

右代表者理事長 須田勝勇

右両名訴訟代理人弁護士 中村作次郎

被告 日本国土開発株式会社

右代表者代表取締役 石上立夫

右訴訟代理人弁護士 各務勇

主文

一  被告木更津市、被告木更津市清見台第二土地区画整理組合は連帯して原告ら各自に対し、金三五一万七、六六二円及び内金三二一万七、六六二円に対する昭和四四年三月二七日から、内金三〇万円に対する昭和四七年三月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らの右被告両名に対するその余の請求、被告日本国土開発株式会社に対する請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告らと被告木更津市、被告木更津市清見台第二土地区画整理組合との間においては、原告らに生じた費用の三分の一を右被告両名の負担とし、その余は各自の負担とし、原告らと被告日本国土開発株式会社との間においては全部原告らの負担とする。

四  この判決は、一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは連帯して原告ら各自に対し、金六一五万円及び内金五五二万五、〇〇〇円に対する昭和四四年三月二七日から、内金六二万五、〇〇〇円に対する昭和四七年三月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による各金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

(被告ら三名)

1 原告らの請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告両名の地位

原告吉沢今朝雄は、訴外亡吉沢朝也(以下、亡朝也という。)の父、原告吉沢清子は、亡朝也の母である。

2  排水池への転落死亡事故

(一) 亡朝也は、昭和四四年三月二六日午後六時頃、木更津市清見台第二工区内の下水管に接続する排水池(縦約三メートル、横約四ないし五メートル、深さ約三・五メートル、水深約二メートル、以下、本件排水池という。)に転落して死亡した(以下、右転落死亡事故を本件事故という。)。

(二) 本件排水池は、原告らの居住地である通称祇園団地に隣接した被告木更津市清見台第二土地区画整理組合(以下、被告組合という。)の区画整理工事施行区域内にあり、被告木更津市(以下、被告市という。)の設置・管理にかかる下水管(直径一・五メートル)に付属し、同下水管に土砂が埋まらないようにするため設けられたものであって、被告日本国土開発株式会社(以下、被告会社という。)が本件排水池の設置工事を担当した。

(三) 右区画整理工事(以下、本件区画整理工事という。)区域は、祇園団地のみならずその西南に位置する多数の住宅、商店などをとりまくように隣接しており、本件排水池は、同区域中、土地造成工事が終了し、平坦な広場になった一隅にあり、右広場が付近に住む子供らの恰好の遊び場となっていたため、その親においては、子供らが本件排水池に転落し、あるいは作業中のブルドーザーにまきこまれるなどの事故発生を絶えず危惧していた。

(四) ところが、本件区画整理工事区域には、本件事故が発生するまで柵などの危険防止設備が何ら設けられていなかったため、右祇園団地の住民らは、本件事故発生の約一ヶ月前と約二週間前の二回にわたり、被告市と被告組合に対し、本件排水池ないし本件区画整理工事区域内に子供らが立入らないよう柵などの危険防止設備を早急に設置するように申入れ、右被告両名は口頭と文書でそれぞれ直ちに柵を設ける旨回答したにもかかわらず、これを実行しなかった。

3  被告らの責任

(一) (被告市)

本件排水池は、雨水や既設の素掘りの側溝からの排水などにより流される土砂が、敷設ずみの下水管内を埋めないようにするため、これを沈澱させるべく右下水管の末端に設けられたものであって、被告市が昭和四三年度分公共事業を終了し、翌四四年度分事業に着手するまでの暫定措置として、これを設置・管理していたものである。

(二) (被告組合)

右下水管及び本件排水池を含む一帯の土地は、被告組合の本件区画整理工事施行区域内にあり、被告組合において本件排水池を占有・管理し、その浚渫作業を行っていたのであるから、被告組合は、危険防止について直接の責任を負う立場にあったものである。

(三) (被告会社)

被告会社は、本件排水池を設置した当の工事担当者である。仮に、被告会社が直接の担当者ではなかったとしても、被告会社は、現に本件区画整理工事を行っていたのであるから、同工事区域の直接の管理者というべく、同区域内に子供らが立入り、事故が発生したりすることのないよう十分な措置を講ずべき注意義務があった。

(四) 以上のとおり、本件事故は、公の営造物たる本件排水池の設置又は管理に瑕疵があったために生じたものであるから、被告市及び被告組合は国家賠償法二条一項により、又、被告会社には、前(三)項記載の過失があるので民法七〇九条により、それぞれ本件事故によって生じた後記損害を賠償すべき責任がある。

《以下事実省略》

理由

一  原告両名が亡朝也の父母であること、亡朝也が、昭和四四年三月二六日午後六時頃、木更津市清見台第二工区内の下水管に接続する窪み状の部分(縦約三メートル、横約四ないし五メートル、深さ約三・五メートル)に転落して死亡したこと、右の窪みが、原告らの居住地である通称祇園団地に隣接した被告組合の区画整理工事区域内にあったこと、右工事区域は、右団地のみならずその西南に位置する多数の住宅、商店などをとりまくように隣接しており、右の窪みは、同区域中、土地造成工事が終了し、広場になった一隅にあったことは当事者間に争いがない。

二  そこで、まず、右の窪みがどのような過程で生成したのか、又、その形状・態様等如何、ひいてはそれが公の営造物にあたるのかの点につき判断する。

1  《証拠省略》を綜合すれば、次の各事実が認められる。

(一)  被告市は、四年間にわたる継続公共事業として一項の下水管工事を施行していたが、昭和四三年度分事業が終了した同四四年一月六日の時点では、小櫃川から本件事故現場まで、直径一・六五メートルの下水管の敷設を了していたこと。

(二)  そして、被告市の翌四四年度分事業としては、右敷設ずみ下水管の南側に更に下水管を接続する工事が予定されていたが、右接続予定の部分には、本件事故当時、被告市の設置にかかる素掘りの土水路(全体を平均すると、幅約二メートル、深さ約三メートル)が存在していたこと。

(三)  本件事故現場は、右敷設ずみ下水管の南端に位置し、同下水管と右素掘りの土水路が接続する部分であり、同土水路の一部であって、いわゆる排水池ではなく、溝状をなしていた(以下、本件溝という。)こと。

(四)  本件溝のおおよその形状が、幅約三メートル、長さ約四ないし五メートル、深さ約三・五メートルであることは一項記載のとおり当事者間に争いのないところであるが、同所には、本件事故当時、深さ約二メートルの水が溜っており、その底は泥状をなしていたこと。本件溝の水深は、それに続く右土水路部分の水深に比べて一段と深かったこと。

(五)  本件溝を含む右土水路は、周辺と比較して低地であった前記祇園団地などへの溢水を防ぐため、仮排水用に設けられたものであって、本件事故以前にも、降雨後、被告市又は被告組合において流入する土砂により浅くなった部分を掘り下げたことがあったこと。

以上のとおり認めることができ(る。)

《証拠判断省略》

2  右認定の事実に基づいて、本件溝が公の営造物にあたるのか否かの点につき判断する。

(一)  一般に、国家賠償法二条一項に規定する公の営造物とは、国又は公共団体の公共の目的に供される有体物ないし物的設備を指すものと解されるので、右の営造物たりうるためには、厳格な意味においては、それが当該物自体として完成していること及び直接公の目的に供されるものであること並びに国又は公共団体の公用開始行為がなされたことを要するものというべきであるが、もともと、同条が公の営造物の設置又は管理の瑕疵により生じた損害の社会的な分担を目的として設けられた規定であることにかんがみるときは、営造物概念を右のように厳格に解するのは相当でなく、たとえ営造物として未完成であり、一時的・仮設的に設けられた物的設備であっても、実質的に見てそれが完成後の営造物に準じた機能を発揮して現に公の目的に供されている場合には、右の営造物にあたるものと解して妨げないのである。そして、また、右のような仮設的設備は、現実には、その供用から生ずる損害発生の蓋然性は、完成設備の場合と比べて一般的に高くなる場合こそあれ、低くなる場合は稀であるから、国又は公共団体としては、当該仮設的設備が通常有すべき安全性を確保すべき義務を免れるものではなく、従ってこの点からみても右安全性を欠いたため他人に損害を与えた場合には、その賠償の責に任ずべきものと解するのが相当である。

(二)  これを本件についてみるのに、前認定のとおり本件溝は前記土水路の一部をなしていたところ、右土水路は、被告市において公共下水道工事を完成するまでのいわゆる暫定措置として仮排水用に設置し、被告組合が主体となって管理していたものである。そして、右土水路は、被告市の設置にかかる前記下水管と接続しこれと相俟って現に右用途に供されていたのであるから、本件溝のみを切り離して公の営造物かどうかを論ずるのは相当でなく、右土水路は、むしろ、右下水管と一体となった設備として把握すべきものである。そうすると、本件溝が、本件事故当時からほどなく埋立てられる予定のものであったにしても、右一体のものとしての仮排水設備(下水管と本件溝を含む土水路)が、現に公共団体(被告市)の公の目的に供されていたことは疑いがないから、結局、本件溝(を含む仮排水設備)は、国賠法二条一項の公の営造物にあたるものと解するのが相当である。

三  次に、本件溝の設置又は管理に瑕疵があったかどうかの点に言及する。

1  《証拠省略》を綜合すると、本件区画整理工事区域は、約一七二万四、四〇〇平方メートルの広大な面積に及んでおり、かつその工事箇所も時々刻々に変化していたこと、被告会社は、本件事故前、右区域内の土地造成工事を担当していたが、同造成工事中に事故が発生することのないよう、本件事故現場から東南側あるいは北東側へ相当隔った地点等に縄を張り、あるいは危険立入禁止の立札をしていたことなどの事実が認められるが、他方、本件区画整理工事区域内では、時折子供の遊んでいたことがあったこと、本件溝を含む土水路の周囲ないしその付近には、被告ら三名において、立入禁止の立札をはじめ縄、柵、有刺鉄線など工事関係者以外の者が容易に立入れないようにするための設備が何ら設けられていなかったこと、本件事故発生の約二月前、原告吉沢清子を含む前記祇園団地の住民が、被告ら三名の各関係者に口頭で、前記土水路その他の箇所に有刺鉄線を張りめぐらすよう要望したことなどの事実も、また認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

2  ところで、本件事故当時、本件溝の水深が約二メートルもあったこと、同所の水深が、それに続く土水路部分のそれと比較して一段と深かったことは前認定のとおりであるから、このような危険な溝が存在する場合、本件溝を設置した被告市、これを主体となって管理していた被告組合としては、本件の如き悲惨な事故が発生することのないよう、少なくとも本件溝の周辺に有刺鉄線を張りめぐらすかもしくは柵を設けるなど相当な危険防護の設備を備えるべきであったといわなければならない。まして、本件の場合、そのような要望が本件事故発生前に現になされていた事実、及びその反面、右防護設備の設置が容易になしえた事実も無視することはできない。そして、この理は、前認定のとおり本件区画整理工事区域が広大で、その工事箇所も時々刻々変化していたという事情があったにせよ、又、被告らの主張するように、被告組合、被告会社において、近隣の住民に子供らを工事現場に立入らせないよう監督を頼み、注意を与えていたという事実が認められるにしても、何ら異なるところはない。

3  以上によれば、本件溝を含む仮排水設備は通常有すべき安全性を欠いていたことが明らかであるから、その設置又は管理に瑕疵があったものというべく、かつ、本件事故による損害は、右の瑕疵のため生じたものと認められるので、被告市及び被告組合は、国賠法二条一項により連帯して右損害を賠償すべき責任を有する。

四  翻って、被告会社の責任の有無について判断する。

1  《証拠省略》によれば、被告会社は、本件事故当時、被告組合から清見台第二工区第三期整地工事(工期昭和四三年八月一日から翌四四年三月三〇日まで)を請負施行していたが、同工事は土地造成のみを対象とするものであり、また、その区域は本件事故現場とは別の地域であったこと、被告会社は、本件事故前の昭和四三年頃、既に本件事故現場付近の造成を終え、これを被告組合に引渡したこと、被告市の設置した前記下水管及び本件溝を含む土水路は、訴外新興土建株式会社の請負施工にかかるものであり、被告会社は当該工事に全く関与していなかったこと、被告会社と右訴外会社との間には、指揮監督、下請など何らの関係も存在しなかったこと及び被告会社の現場責任者は、本件事故当時、被告組合の現場監督から右下水管と土水路の周辺には手をつけないよう指示されていたことなどの事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  右事実によれば、本件事故現場ないしは仮排水設備付近が被告会社の管理下にあったとは認められないから、これを前提とする原告らの被告会社に対する請求は、この点で既に失当といわなければならない。

五  原告らの損害

1  亡朝也の逸失利益

《証拠省略》によれば、亡朝也は死亡当時四才四ヶ月の健康な男子であったことが認められるので、本件事故により死亡しなければ、満七〇才位までは生存しえ(厚生省の簡易生命表による。)、満一八才から満六三才までの四五年間は稼働しえたものと推認される。そして、労働省の賃金構造基本統計調査報告(昭和四四年度)によれば、企業規模計、学歴計の全産業男子労働者に対しきまって支給する現金給与額は月額五万八、〇〇〇円、年間賞与その他の特別給与額は年額一六万五、六〇〇円であるとされているから、亡朝也は一八才から六三才まで年間平均八八万一、六〇〇円の収入を得ることができたであろうと推認でき、これを基礎として、右稼働期間を通じて控除すべき生活費を五割とし、中間利息の控除につきホフマン式計算法を用いて死亡時における亡朝也の逸失利益の現価額を算定すれば、左記のとおり金七一九万二、二〇六円となる。

861,600×1/2×(27.104-10.409)=7,192,206

原告らは、亡朝也の父母であるから、同人の死亡によりこれを二分の一ずつ各金三五九万六、一〇三円宛相続したものと認める。

2  慰藉料

《証拠省略》によれば、原告両名が亡朝也の死亡によりうけた精神的苦痛には計り知れないものがあると認められるが、一方、原告ら側にも、後記のとおり本件事故発生につきかなりの過失が存すると認められることその他本件口頭弁論に顕われた一切の事情を斟酌すると、原告らの慰藉料としては、各自金一〇〇万円が相当である。

3  葬儀費用

亡朝也の葬儀が原告両名の手により行われたことは、《証拠省略》により明らかであって、当時、右葬儀に通常要すべき費用としては、金二〇万円を下らなかったものと認められるから、原告らは各自金一〇万円宛の支出を余儀なくされたと認める。

六  過失相殺

1  《証拠省略》によれば、亡朝也は本件事故発生の日である昭和四四年三月二六日の翌月に幼稚園に就園する予定であったこと、原告清子は、本件事故前、子供らが運転中のブルドーザーに接触したり、前記土水路に転落したりするのをおそれ、亡朝也に対しても、本件区画整理工事現場へ入らないよう相当厳重に注意していたこと、亡朝也は、本件事故前、前記造成工事により切崩された山の上で遊んでいて腹部まで埋もれたことがあったこと、原告清子は本件事故当日、長男信之(当時六才三ヶ月)の卒園式に出席するため、長女克美(当時三ヶ月)をつれて出かけたが、その際、原告今朝雄に亡朝也の世話を頼んだこと、原告今朝雄は、正午頃出勤するため、近隣の知人に亡朝也を預けたこと、原告清子は同日午後一時頃帰宅したが、午後三時になっても亡朝也が帰宅しなかったため、右知人に問合せたところ、「年上の子供と一緒に糸を貰いに来て午後一時頃出かけていった。」という返答をうけたこと、ところが、亡朝也がなおも帰宅しないので心配になり、同日午後五時から五時半頃、原告今朝雄に電話連絡したことなどの事実が認められ、右事実によれば、亡朝也は、本件事故当日、本件溝へ魚釣りに出かけ、誤って同所に転落、死亡したものと推認することができ、右認定に反する証拠はない。

2  右事実に基づけば、本件事故発生について、亡朝也自身に重大な不注意があったことは否定すべくもないが、同人は本件事故当時、いまだ四才四ヶ月の未就園児であったから、通常、社会共同生活に伴い発生することあるべき諸々の危険を自己の判断により予見し、これを回避するだけの社会的能力をいまだ備えていなかったものと推定される。そうすると、亡朝也が、いわゆる事理を弁識するに足る智能を有していたものと認めることはできないから、同人の右過失を本件損害賠償の額を定めるにつき斟酌することは相当でない。

3  しかし、翻って、原告らの亡朝也に対する監督の点についてみると、自宅近辺にこのような危険な工事現場が存在する場合、亡朝也の如き幼児をもつ親としては、子供らが工事現場に立入らないよう十分に監督すべき責任があったものというべきであって、まして、本件の場合、前認定のとおり亡朝也がかつて泥山の中に腹部まで埋まったことがあったというのであるから、殊更監督を強めるべき立場にあったものと認められる。しかるに、本件事故当日の原告らの前記行動をみると、子供にとってまことに危険な工事現場が間近に存在する以上、亡朝也の動静を一段と注意深く見守り、より早急に同人の行方を捜すべきであったにもかかわらず、これを十分に果さなかったものといわざるをえず、かような監督不行届きが本件事故発生に帰与した割合も相当高いものと評価される。

よって、本件賠償額の算定にあたっては、原告ら側の右過失を考慮し、原告らの損害に四割の過失相殺をするのが相当である。

七  まとめ

以上の原告らの損害のうち、被告市、被告組合において賠償すべき金額は、次の計算式のとおり、原告らの逸失利益相続分と葬儀費用に四割の過失相殺をした金額に慰藉料を加算した金六四三万五、三二四円(円未満四捨五入)となる。

(7,192,206+200,000)6/10+2,000,000=6,435,324

従って、原告各自の損害は、その二分の一である金三二一万七、六六二円である。

八  弁護士費用

原告らが本件代理人に本訴の追行を委任し、その着手金として一五万円を支払い、かつ報酬の支払約束をしたことは、本件口頭弁論の全趣旨により明らかであるところ、本件事案の難易、審理経過、本訴認容額等に鑑み、本件事故と相当因果関係を有するものとして被告市、被告組合に請求しうべき弁護士費用の額は、金六〇万円とするのが相当である。

九  結論

以上の次第であって、原告らの被告三名に対する本訴請求は、被告市、被告組合に対し、連帯して各金三五一万七、六六二円及びうち弁護士費用を除いた各金三二一万七、六六二円に対する本件事故発生の翌日である昭和四四年三月二七日から、うち弁護士費用である各金三〇万円に対する履行期の後である昭和四七年三月三〇日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、右被告両名に対するその余の請求、被告会社に対する請求はいずれも失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小木曽競 裁判官 橋本和夫 片野悟好)

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